Vol.2「星空の楽しみ方を調査!」
星空の美しさを生かしたさまざまなイベントやアクティビティを県内各所で開催している鳥取県。今回は、鳥取県らしい星空の楽しみ方や思い出の残し方についてお話を伺います。
お話を伺ったのは…

風景写真家/地域活性プロデューサー
柄木 孝志(からき たかし)さん
大阪府出身。編集プロダクションにての雑誌等のディレクター経験を経て、Iターンで鳥取県米子市へ。全国さまざまな地域がもつ自然環境の豊かさを、写真というコンテンツを通して情報発信を行う。
心動かす圧倒的な星空を見たことがありますか?
編集部:大阪からのIターンで鳥取県へ移住されたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?
柄木さん:移住したのが今から約20年前になります。出版社で雑誌編集に携わっていた当時、休みもなくとても慌ただしい日々を送っていました。何度か仕事で大山(だいせん)を訪れたことがあったのですが、簡単にいうと、その時に見た大山の迫るような星空や自然に魅せられた、というところでしょうか。
大阪暮らしの自分にとって、大山の星空の違いは圧倒的でした。一等星・二等星どころか、肉眼で衛星が移動しているのまで見えるんです。これには驚きました。
編集部:当時から写真家として活動されていたのですか?
柄木さん:写真家は後付けです。とにかく、この地域の素晴らしい自然を多くの人に知ってもらいたかったんです。当時はまだ今のようにSNSが普及していませんし、簡単にこの景色をシェアするなんてことはできませんでした。
それに、地元の方々にとってはこの自然環境が当たり前のことすぎて、この素晴らしさに気付いていない人が多かったんです。ただ、残念ながらどれだけ言葉で伝えても響かない。なので、まず、地域の人に自分達が暮らしている場所の自然=資源に気付いてもらうために、写真というツールを使って伝えていこうという想いで、本格的に風景写真活動をスタートさせました。
編集部:写真家として、鳥取県らしい星空とはどんなものですか?
柄木さん:単に満点の星が見える、とか、星空が美しい場所というのは日本全国にもたくさんあります。私は美しい星空というのは、単に「星」だけではなく、周辺の風景と重なった時に生まれる風景ではないかと感じています。
鳥取砂丘の星空
鳥取県には、大山や鳥取砂丘など、ここにしかない自然や景色があります。鳥取県の星空を楽しむ時には、鳥取県を代表する名所越しに見る星空の感動を味わってほしいですね。
大山の星空
記憶にも記録にも残す、アクティビティを知っていますか?
編集部:大山の星空アクティビティをプロデュースされていますが、どのような想いで始められたのでしょうか?
柄木さん:鳥取県は星空を守る条例を作って、保全活動を行っています。それは「官」の役割としてとても素晴らしいことだと思いますし、続けていくべきことだとも考えています。ですが、もう一つ大切なことは、観光コンテンツとして、鳥取県の星空をきちんと成立させることだと感じていました。要は「民」が生み出す自走可能な観光のビジネスモデルです。
そうしなければ、発展性もなく地域活性化にはつながらない。その結果、継続していくことが難しくなり、鳥取県が「星取県」として名乗り続けることも難しくなってしまうのではないかと今も危機感を持っています。
鳥取県の星空を、首都圏や関西圏の目の肥えた観光客にもわざわざ足を運んでもらえるだけの、収益性が高く、質の高いコンテンツに磨き上げるという気持ちで携わっています。
編集部:わざわざ足を運んでもらうためのアイディアとはどのようなものですか?
柄木さん:今の観光は、「どこに行く」ではなく、「どこに行って何をする」という時代。具体的な旅の提案がないとなかなか足を運んではくれません。そのうえで、今はSNSがトレンドを創る時代。実はスマホの普及も相まって、「写真」というワードが観光におけるキーワードとなっています。
私は、10年ほど前からその「写真」を使った地域活性化、また観光のブランディングを行ってきました。それは、単に「撮る」、「発信する」といったプロモーションオンリーの施策だけではなく、それをどう「売る」、どう「地元に還元する」という産業・ビジネスを生み出すこと。
そうしなければ、結局のところ地域が元気になるということが成り立たないと気付いたからです。そのうえで、5年前から大山で行っているのが、大山観光局とタッグを組んだ星空をテーマにしたオンリーワンのツアーの開発。その第一弾として提案したのが、「大山星空で遊ぶツアー」です。

「大山星空で遊ぶツアー」

「大山星空で遊ぶツアー」
全国各地で星空の観察会やフォトツアーなど「見る」「撮る」というイベントはたくさん開催されていると思います。私たちが作ったのは、「撮られる」ツアーなんです。
星空というのは、目で見て、「記憶」には残せても、「記録」に残すことは難しいんです。今はみなさん、旅先での写真をSNSに載せますよね?ですが、スマホは夜の撮影が苦手なんです。なので、このツアーでは、素晴らしい星空と出会った体験をきちんと形で残すために、カメラマンがガイド役を務め、参加者がモデルとなり、プロの機材で撮影したデータをお渡しします。
そうした質の高い素材が提供されることで、参加者はみなSNSで家族や仲間と写真を共有する。そうした旅の思い出を「記録」として残すことで、客が客を呼び、宣伝をせずとも徐々に周知され、このコンテンツは継続的に発展してきました。そして今ではなかなか予約の取れないツアーと呼ばれるようにもなりました。

「星空ヨガ」のイメージ
この「大山星空で遊ぶツアー」が成功したことで、第二弾、第三弾のツアーは、環境省からお声がかかり、企画提案、実施へと動き出しました。国立公園のさらなる資源活用を依頼されてのものです。それが、「大山×星空を観る 最も美しい場所での観賞&撮影ツアー」、「大山星空ヨガ」の2つのツアーです。

「大山×星空を観る 最も美しい場所での観賞&撮影ツアー」
特に、「大山×星空を観る 最も美しい場所での観賞&撮影ツアー」は、私自身非常に思い入れのあるもの。撮影活動の中で、自身が大山の中でも、一番美しい星空風景を見られる場所だと実感していて、これを多くの方に観ていただく機会を作れないだろうかと。
そのうえで、一般の方がなかなか立ち入れない登山ルートの道中にあることもあり、登山ガイドも同行することで安全・安心にお連れするツアーを実現しています。特に冬は圧巻の風景で、1万円を超えるツアーにもかかわらず、毎年多くの方に参加いただく人気ツアーとなりました。
これらのツアーは、まさにSNSを意識し、そこで「写真」を共有してもらうことが前提。人に見せたくなる素材をいかに提供するか、撮影するか、まさに「写真」というキーワードで、大山の星空プログラムを構築しています。これは他県にはない内容であり、組み立て。まさに星取県にしかない観光コンテンツと言えます。
この大山でのパッケージは、今後「大山星空ビジネスパーク構想」として、広く展開していく予定です。
体験の詳細については「大山星空で遊ぶツアー」
https://tourismdaisen.com/tour/star/をご確認ください。
鳥取県にゆかりのある惑星を知っていますか?
編集部:星空アクティビティのほかに、鳥取県ならではの星空にまつわるとっておきのお話はありますか?
柄木さん:ありますよ。植田正治写真美術館はみなさんよくご存じだと思いますが、ここも星と関係のある場所なんです。鳥取県にある「さじアストロパーク」はいくつか小惑星を発見し、命名していることで知られていますが、1998年に発見した小惑星「UEDASHOJI17748」は、その名の通り、写真家・植田正治先生の名前がつけられているんです。
しかも、命名したのは、植田正治写真美術館で写真展を開催したこともある福山雅治さん。この惑星にちなんだ曲も作曲されたんですよ。植田正治写真美術館から見る、大山×星空はとても美しいので、是非足を運んでいただきたいです。
植田正治写真美術館からの大山と星空
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鳥取県で体験したいオススメ星空アクティビティ
- 柄木さんプロデュースの星空体験。
「大山星空で遊ぶツアー」https://tourismdaisen.com/tour/star/ - 日本一の海岸砂丘で星空体験。
「鳥取砂丘星空観測ナイトツアー」 https://tottori-tours.com/plan/tottorisakyu_stargazing - 温泉街で天体観測を楽しもう。
「三朝(みささ)温泉 スターウォッチング」https://misasaonsen.jp/hoshitori/
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、アクティビティは休止される場合があります。おでかけ前に必ず最新情報をご確認ください。
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【Vol.3に続く】