ソラギツネの新月通信/
子どものための世界文学の森28『ギリシア神話』
宙フェス夜市の番人ソラギツネによる宇宙を感じる作品の紹介。今回は「子どものための世界文学の森28『ギリシア神話』」を紹介します。
[著]トマス・ブルフィンチ
「宇宙・星」の棚に並んでいる本だけが宇宙の本ではないし、SF映画だけが科学の映画じゃないよね。本、映画、マンガ、ドラマなどのエンタメの中から、ボク、ソラギツネが宇宙を感じる作品を紹介するよ......どんなものにでも宇宙はひそんでいるのさ。

ギリシア神話3000年のエッセンス
子どものための世界文学の森28『ギリシア神話』
この本は、トマス・ブルフィンチが1855年に書いた『The Age of Fable(伝説の時代)』からぬきだしたお話を子ども向けに訳したものです。
「ギリシア神話」は吟遊詩人によって口から口に受け継がれ、3000年ほど前にはすでに存在していたそう。
それが、紀元前800年頃にホメロスによって叙事詩としてまとめられたり、他の詩人や学者たちの手で肉付けされたりしながらかたちをなしていきました。
やがて、地中海地域がローマによって支配されると、「ギリシア神話」はローマ人たちに受け継がれていきます。
トマス・ブルフィンチの『The Age of Fable』は、そんな西洋文明全体の神話とも言える「ギリシア神話」を一般読者むけに凝縮したもの。つまり、「子どものための世界文学の森28『ギリシア神話』」は凝縮の凝縮のような本ということになります。
ですので、どのお話も粒ぞろいで飽きさせませんし、西洋的なロマンというものをしっかりと感じさせてくれます。
たとえば、プロメテウスという神さまが人間を作った時のエピソードは秀逸です。
プロメテウスが土と水をこねて人間を作った時、「人間だけは天を見上げられるようにしよう」と思い立ち、二本の足で立てるようにしたそうです。
だから、他の動物はみんな地面に顔を向けているのに、人間だけが空を見上げ、星を眺められるようになったそうです。
人間を作ったプロメテウスも、眺めるだけに飽き足らず、ロケットで宇宙に飛び出すとはさすがに思わなかったでしょうね。

「子どものための世界文学の森28『ギリシア神話』」
[著]トマス・ブルフィンチ
[訳]箕浦万里子
集英社(1995/3/23)
(宙フェス夜市編集部)
ソラギツネの新月通信/子どものための世界文学の森28『ギリシア神話』